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漢字の「薬」は、なぜくさかんむりに楽と書くの?

 

 

1、「薬」とはふつう、病院で処方してもらうもの。待合室で同病相憐れむのが好きな「病院マニア」ならともかく、大多数の人にとっては、薬をもらうのはけっして楽しい経験ではありません。なぜ「くさかんむり」に「楽」なのでしょうか?

 

「薬」に「くさかんむり」が使われていることについては、そんなに驚くことではありません。漢字はもともと中国で生まれたもの、中国の薬といえば漢方薬、漢方薬といえば、草の根っこだったり木の皮だったり……。大昔から、人間が植物を薬として利用してきた歴史を思えば、「くさかんむり」が使われているのは、当然のことといえるでしょう。

 

 

 

問題は「楽」の方です。諸説分かれているのが現状です。ここでは、その中で一番有力らしいものをご紹介しておきましょう。それは、この「楽」は「療」のことで、「いやす」という意味だというものです。「療」は「治療」の「療」ですから、「いやす」という意味があるのは、もっともです。でも、そう言われたって、なぜ「楽」が「療」につながるのかは、私たち素人にはサッパリわかりませんよね。その疑問に答えてくれそうなのが、『大漢和辞典』に載っている、   ↓図のような「やまいだれ」に「楽」(樂)と書く漢字。

この漢字の意味は「いやす」、音読みはリョウで、「療」と全く同じです。とすると「薬」とは、「療」の「やまいだれ」が「くさかんむり」に変わっただけともいえるのです。

もっとも、これも有力な一説にすぎません。たいていの漢和辞典には、字源の解説も載っています。納得がいかない人は、いくつかの漢和辞典で比べ読みしてみてください。

 

2、「楽」という字には「細かく切る、刻む」という意味があります。また、国語辞典の『大言海』によれば、くすりは「草煎(くさいり)」から変化した言葉とされています。草煎りとは、草を煎じること。植物を細かく砕いたり、煎じたりして利用したもの、それがもっとも一般的な“くすり”だったのです。

 

 

※出典:1は漢字文化資料館 2は内藤記念くすり博物館蔵

 

ケミストムトウ薬局 東山店(2024年6月)

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